03_生前の話:幼少の頃

ENo.47.ナポレオナス / 作成:2026/08/27 01:41 / 更新:2026/08/27 01:43
ナポレオナスの植物好きは、幼少の頃からだ。

今でこそ"ああ"であるが、幼少期は非常に大人しい子供だった。
両親以外には人見知りしがちで、皇族として、第一皇子としての時間より、花を愛でる時間の方が好きだった。

周囲の文官や一部の侍女からは『男児らしくない』と言われていた。
そんなナポレオナスを、両親だけは否定しなかった。
父帝からは『お前が好きな物を好きなままで在れるよう、平和に過ごせる世の中にしてみせるからな』と。
母親からは『花を好む程に心優しい、そんなお前が好きよ』と。
幼いナポレオナスは、そう言って笑ってくれる両親が、大好きだった。

しかして。
或る時を境に、母親はナポレオナスに熱心な教育を強いるようになった。

其れは、ナポレオナスが8歳の頃。
母親が弟か妹を身籠り、だが些細な事故が発端の高熱病によって流れてしまった後。
暫く癇癪気味だった後、何かに取り憑かれたかの様に、愛息子に英才教育を強要し始めたのだ。

ナポレオナスは、何も知らなかった。
母親が、父帝の側室後の異母弟の母親を心底毛嫌っていた事を。
其の些細な事故―皇居に迷い込んだ青い眼の野良猫に引っ掻かれた―と流産を『側室が咒ったのだ』と決めつけ、強く怨んでいた事【なお実際は完全に無関係であり、完全に逆恨みである】を。
其れから暫く経って、側室の方が身籠り、男児異母弟を産んだ事を。
側室が亡くなった後、残された男児を母親が引き取り、離れに幽閉し、侍女達に飼育・・させていた事を。

当時は、何一つ、知らされなかったのだ。

其れでも。
其れでも、ナポレオナスは、母親に応えようと、精一杯努力した。
己の夢を鎖し、母親の言いつけを守り、第一皇子として毅然と在ろうと。

母上が怒るのは、怖かったから。
母上には、昔みたいに、笑っていて欲しかった、から――