最近あったこと

ENo.12.性別不詳 / 作成:2026/08/29 06:32 / 更新:2026/08/29 06:39
性別不詳の記録の更新は大分気まぐれなので、結構前の記録が混じってたりする。

最近あったこと……性別不詳は、海に行ったよ。
最初にここに来たときに会った、トウヤさんと、凪さんもいたし、初めて会う人もいたね。
あと、トウヤさんは、性別不詳の姿を見て驚いてたね。

……そういえば、性別不詳は最初、魂の形が安定しなくて、影みたいになってたっけ。
でも、なんとか、今の形に落ち着いたみたいでよかった。
ちゃんと、髪型も神様とおそろいだったし。

性別不詳はね、髪型は神様とおそろいにしてるんだ。
鏡をみたら、神様と一緒にいるような気がするから。
髪質も毛の量も、顔も全然違うんだけどね。
それでも……この髪型は、神様との唯一のつながりだから。

あと海では……化け物が化け物になってたね……。
ああいうのって、魔物とかそういう区分になりそうだけど、どうなんだろうね。
性別不詳の世界だと、討伐対象だと思うな……。
……あんまり詳しくないけれど。

でも、あの水さん、絶対、普通の世界では生きられなかったタイプの人だと思う。
もとから怪しいとは思ってたけど、死体がいっぱいある部屋で安眠できるのは常人ではないと思う。
それに……死体をよく運んでいたらしい。

あとは……直感でしかないけれど、性別不詳のこういう直感は結構当たるんだ。
危機感知、っていうのかな。色々あってそういう人間を見分けるのは得意なんだ。
完全にあってる、とまでは言い切れないけれど、少なくともあのお水さんは真っ黒だと思う。
なんていうんだっけ……社会からはみ出た存在?普通に生きることはできないんだと思う。
性別不詳と一緒で、かわいそう。





あと、最近あったことと言えば……性別不詳にニックネーム?ができたよ。
ルーさんが言うにはね、「neither(ナイジャー)からとってきたらしい。
「おまえは何者でもなく、同時に、何者にでもなれるという可能性」
「おまえ自身の選択次第で、どちらにも変じることができる」
そういう意味があるんだって。

性別不詳はね、親に名前をつけてもらったかよくわからない。
だから、自分の名前もわからないし、神様につけてもらうまで本当に名無しの存在だったから。
人につけてもらったのは初めてだったと思う。

性別不詳のために、一生懸命考えてくれて、性別不詳は本当に嬉しかったな。
最初聞いたときは言葉自体は、よくわかってないけれど……。
……あのとき、ちゃんと意味が理解できてなくてごめんなさい。

……性別不詳はダメな子だから。
きっと、何者にもなれないと思うけれど。
性別不詳は……きっと本当はね、生きてちゃダメな存在だから。
ここで過ごして、性別不詳はそんな気がしてきたんだ。
ルーさんはきっと優しい人なのに……ごめんなさい……。

そういう意味では、あの運び屋の水さんと同じだね。




あと……民家にヤギさんがいたよ!
ラムネさんが教えてくれた、ヤギだ!!

最初、紙やおにぎりをあげたんだけど、紙には興味なくて、おにぎりはボールになっちゃったな……。
でもヤギさんは楽しそうに遊んでたからいいんじゃないかな……。

でも、その後ちゃんとなでなでできたし、ヤギさんと一緒に涼んだりしたよ。
動物と触れあえるようなところで生きてなかったから、撫でれてよかったなぁ。

ヤギさんの角と神様の角はちょっと似ている気がするから、進化したらヤギさんも神様になったりするのかな。
そうしたら、ヤギさんって、本当はものすごく神聖な生き物なのかな?
(ここでいう神様の角は悪魔の角ではあるんですがね)

またどこかでヤギさんと触れあえるといいな……。
黒い生き物でも、このヤギさんはいいヤギさんだね。





あと、神様から話を聞いていた「星屑列車」に似てる列車を見つけたよ。
性別不詳は、列車にはあまり乗ったことがないから、おとぎ話のように聞かせてくれたんだ。
実際に、なんか、すごい能力をさすがって、死んだら願いを叶えてくれる列車の乗務員さんになる、という人もいるらしい。
願いを叶える列車なんてあったら素敵だと、性別不詳は思うんだ。

……今の性別不詳は、何を願うのかわからないけれど。
前は今いる場所が嫌で救いを求めていたんだけど……ここに来て、色々知って、生きるのって楽しいのかもしれないって……。

……そんなことは書かない方が良いよね。

そういえば、あの列車に乗ってきたというお姉さんにも出会ったんだよね。
スマリさんっていうらしい。本当にあの列車はあるんだ、おとぎ話じゃないんだ!
どうやら、スマリさんは一緒に乗ってきた人とはぐれてしまったらしい。

……ひとりでいるのって、寂しいことだよね。
性別不詳は、神様がいなかったらきっと……ずっとひとりだったから。
スマリさんが探してる人に、早く会えると良いな。

あと、ここにはすりりんぐ?な遊園地があるらしい。
性別不詳は、遊園地にも行ったことがないから。時間を見つけて遊園地にもいってみたい!
花火も配ってるらしいから、花火もやってみたいな……!

……こうしてみると、性別不詳はやってないことがとても多いね。





あと、性別不詳は、路地裏に行ってみた。
路地裏は、行ったことがある。
外、という意味なら、ある意味一番いた場所かもしれない。

壁に貼られた古い張り紙、いくつも積まれているゴミ袋。
壁にもたれかかってる影。

どれも、見たことある光景だった。

そんな中、性別不詳は、落ちていた似顔絵を拾った。
そのときに、記憶が流れ込んできた。

お兄さんが、複数の大人に囲まれて、銃を突きつけられているところだった。
お兄さんが顔を上げて一瞬笑顔になった後――。
みんな消えて、手書きの似顔絵だけが残されていた。

『おにいちゃんと 平和に暮らしたかった』
そんな記録が、性別不詳の頭に入り込んできたんだ。



あぁ、そっか。
そういうことだったんだ。
――性別不詳は、そっち側の人間だってことを思い出した。




ある日、ぱったりと天使さまが見えなくなったあたりの話なんだけどね。
性別不詳の家に、大量に大人の人が押し寄せてきたの。
あとから聞いた話だと、お父さん宛の借金取りが家に押し寄せてきたらしい。
だから、性別不詳は、痛い目に遭ったよ。
このままだと、死んじゃうんじゃないかって、思った。

……でもね、性別不詳はまだ天使さまと一緒にいたかった。

性別不詳はダメな子だったから、お父さんによく怒られていたし、見捨てられたりもしたけれど。
どうせ、何やっても怒られるのはわかってるし、このまま死んじゃうくらいなら、いっそのこと、好きに怒られることしても良いって思ったの。
それくらい、天使さまが好きだったから。

そこからはよく覚えていない。
魔力が暴走したのか、火事の馬鹿力なのかよくわからないけれど……。
性別不詳は、大人たちを全員殺してしまったらしい。







その惨状を見た組織の人たちがね、性別不詳を見込んで、その組織の人に殺し屋として育てられて、暗殺部隊に所属することになったんだ。性別不詳はね、殺人鬼の才能があったみたいでね。色んな人を殺したんだ。
正直に言うとね、命を奪ったことには、悪いと思ってなかったんだ。

だって、性別不詳は、生きてる方がつらかったから。
でも、性別不詳はまた天使さまに会いたかったから、生きるために人を殺し続けたよ。
天使さまがいないと、性別不詳はひとりぼっち。
一人きりで死にたくはなかったから。

……それに、死は救いだから。
性別不詳は、悪いことはしてないって。
そう思って……いや、そう思わないとどこかで壊れちゃうから。
言われるままに、人を殺し続けた。

殺して、殺して、殺して、ころして――――。



しばらくしたある日、性別不詳の前に天使さまが現れた。
でも、天使さまはいつもの天使様じゃなくて、ヤギのような角が生えていた。

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堕天使
……久しぶり


……あぁ、そうか。
天使さまは、性別不詳のために、神様になってくれたんだ。
この残酷で理不尽な世界から、救い出してくれる、そんな性別不詳の神様に!!!!

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性別不詳
……ありがとう、神様

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堕天使
僕は、神じゃない。今から君を死に至らせる、悪い堕天使なんだよ

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性別不詳
……でも、性別不詳を救ってくれるから。性別不詳にとっての、神様だよ


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堕天使
……ごめんね




そうして、性別不詳の最期の記憶。











……だから、性別不詳は悪い子なんだ。
運び屋の水さんと同じ、そっち側の人間。
異常者側の、人間。

こういう、性別不詳みたいなのはね、普通に生きるのは無理なんだよ。
だから、水さんが人間の姿をしたとき、つい反射的に武器を取ってしまったんだよ。

水さんみたいに、死体が好きとか、そういうまともじゃない人間は、組織を通して何人も何人も見てきた。
だから、なんとなく、裏社会の人や、それに近い人物はわかるようになってしまった。
そう、だからあのときも、化け物の姿ではなく、裏社会の人と近い何かを感じ取ってしまった、人間の姿の時につい、反射的に武器を構えてしまった。
こういう自己防衛が癖になってしまっているんだ。



……だからきっと、普通に生きたいって思っちゃいけないんだと思う。
いくらここの生活が楽しいからって、その選択を選んでいいのか、性別不詳は迷っている。