幕間 ~次代、決定

ENo.47.ナポレオナス / 作成:2026/08/29 13:57 / 更新:2026/09/04 22:11
――某日、帝都、皇居内にて。


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宰相ガヴライル
「……御躰の具合は如何ですかな、前帝陛下」

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前帝ディミトリオス
「…………」
「理解っていて、聞いているだろう……そなた」

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宰相ガヴライル
「……失礼」
「しかして、何もお声がけせずに見舞う訳にもいきませぬ故」

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前帝ディミトリオス
「…………」


暫しの無言。
先に動いたのは、前帝の方。


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前帝ディミトリオス
「……此れを、そなたに託す」


震える手で差し出したのは、一通の手紙。


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宰相ガヴライル
「……此方は?」

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前帝ディミトリオス
「……次の、皇帝について」
「我が、勅命として……認めた、ものだ」


勅命。
即ち――此の帝国に於いて、絶対の効力を持つ命令。
余程の例外が起こらない限り、誰一人、此れを覆す事は能わない。


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前帝ディミトリオス
「……そなたも、察している、通り……私も……もう、長くない」
「ナポレオナスが帰らなかった、直後から……最低限の、立て直しが出来ただけ、僥倖……だろう」

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宰相ガヴライル
「……陛下」

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前帝ディミトリオス
「……頼む」
「私と、ナポレオナス……2代に渡り、支えてくれた……そなただから、託す」


…………

……………………


手紙には、こう記されていた。
第■代皇帝ナポレオナス・アレクサンテリ・イリァコス・ヒルデブラントの跡を継ぐ次代皇帝に、
我が第二子、セオドール・アレクサンテリ・メナス・ヒルデブラントを指名する。
また、セオドールの後見人として、宰相ガヴライル・エルハルトを指名する。

此れは、第■代皇帝ディミトリオス・アレクサンテリ・イリァコス・ヒルデブラントの勅命である。

但し――セオドール本人の意志を、最優先に考慮する事。
セオドールが帝位継承を望まぬのであれば、南方辺境伯ギルスタゥタス家と連携し、隣国との合併・属国化を平和的に進める事。

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宰相ガヴライル
「…………」
「……………………」


宰相専用の執務室で、内容を確認して。


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宰相ガヴライル
「……っは」


――嘲笑いを、隠しきれなかった。


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宰相ガヴライル
「……本当、御人が好すぎる事だ」
「陛下も、あの愚かな長男も」


まぁ、誰からも忠臣に見えるよう演じて生きて来た事には自信は有ったが。
よくもまぁ、此の御時世に――此処まで他者を信用出来る者が国のトップに居られたものだ。


宰相ガヴライル・エルハルトについて
ヒルデブラント帝国、辺境村の富豪出身。
生まれ育った村にて神童と謳われ、軍略等に於いて特に才能を見込まれた男。
其れ故、成人前から帝都へ迎え入れられ、多くの文官達に交じり、才覚を顕していった。
其の結果、若きディミトリオス帝に宰相として抜擢された。

そうした経緯故に。
野心や名誉欲も順当に育ち、其れを隠して生きてきた。

そして、今。
彼は、幼き皇帝の後見人という絶好の機会を与えられてしまったのだ。


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宰相ガヴライル
「……あぁ、勿論、勅命には従いましょうぞ」

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宰相ガヴライル
「そう」
勅命には、ね――


…………

……………………


それから、半月経った頃。
ナポレオナスが崩御して半年程の頃。
病に臥せっていた前帝ディミトリオスも、静かに旅立って。

葬儀にて。
宰相ガヴライルにより、最後に残された勅命が読み上げられた。
後半の、セオドールの意志確認については、跡形も無く消された状態で。