Epilogue02_斯くして、見届けた行く末は
私は、形式上"精霊皇"殿の客人として精霊郷に滞在する事となり、皇殿の監視下で現世―我が祖国と民の行く末―を見守る時間を与えられた。
厳密には、皇殿が現世を確認出来る大鏡の間に向かう時間に同伴、という形であったが。
其れでも――結果として、私が未練を解消するには充分だった。
異母弟は、私よりも、ずっと優秀だった。
私と似た様なたたらを踏む 事無く、皇帝として為すべき事、為したい事を成し遂げてみせた。
本当に。
心から、良かった、と、思ったんだ――
厳密には、皇殿が現世を確認出来る大鏡の間に向かう時間に同伴、という形であったが。
其れでも――結果として、私が未練を解消するには充分だった。
見届けた時間、大陸での年月にして凡そ26年程だろうか――
私が現世に戻ってきた頃には、父上は病に屈して亡くなっており、私の跡を継く形で異母弟 が未成年のまま即位していた。
宰相は、異母弟を傀儡として野心と名誉欲を満たし、いずれ改革 を起こして自分が頂点の軍事国家を築こうとしていたらしく。
異母弟は誰よりも其れを的確に察して理解し、納得した上で、そんな宰相に協力を願っていたという。
異母弟は、父上や私とは違う考え方で、我等の悲願を受け継ごうと懸命だった。
先ずは、傾きかけた国内情勢の安定を第一優先とし。
一方で、私が死んだ事で離れた一部兵力の補完も兼ねて、帝国内北部を本拠地とする修練集団に交渉・当時発生していた問題を解決。
更に異母弟自らが短期集中型の弟子入りをして、其の成果は帰還直後の魔物襲撃対処にて遺憾無く発揮 され、其れが帝国内での異母弟の評価が変化する切欠になった様だった。
異母弟は、其れからも平和的な手段で隣国や他国と向き合い、互いに納得が出来る形に成るまで話し合い、助け合っていった。
相手の国が苦手とする分野が有れば、帝国に出来る範囲で助力し。
逆に帝国が苦手とする分野については、相手にとって無理にならない範囲で援助を願う。
此れまで、大陸の各国が睨み合い小競り合っていた、其々の原因と向き合い、其の解決の為に、一緒に考え、打開していく。
武力に依る制圧では無く、互いの信頼を築き、其の実績を積み上げ、共に笑い合える世界を、目指していた。
帝国内では、異母弟は飲食を兵達と共に分かち合うようにしていた。
そうして兵達とも交流を持ち、上流階級以外の考え方をより理解し、寄り添おうとしたのだろう。
其れは結果的に、食事への服毒に依る皇帝暗殺という手段を防いでいたが――きっと異母弟は知る由も無い。
私の母上や、其の御実家にも色々と考慮をしてくれていて、皇居近くに国営庭園の建設を考案し、其の計画実行を母上に一任したりしていた。
何れ実行したいと考えていた教育改革も、元から在る大学を貴族以外でも通える学舎への改装を発端に、隅々まで為してくれた。
勿論、全てが順風満帆に行えていたわけでは無かった。
けれど、其れでも異母弟は諦める事無く、尽くを成し遂げていった。
例え相手が異民族であろうと、亜人種であろうと。
言葉が通じて、語り合える相手ならば――余程の事態にならない限り、平和的に国交を繋げ、絆を紡いでいった。
いつしか、そんな彼を民達はこう呼んでいた――"和睦の賢帝"と。
彼の傍には、いつだって嘗ての親友 が騎士として仕え続けて。
彼の背後では、あの宰相が嫌味ったらしくも助言や考察をしてくれて、私や父上の時と同じ位、いや其れ以上に頼もしかった。
あぁ、そういえば親友 は皇居勤務で知り合った術師の女性と婚姻していたな……婚姻というか、異母弟の為の同盟みたいな感じらしいが。
双方合意なら良いか……でも肝心の異母弟に確り説明してないのは、ちょっとどうかと思うんだが。良いのか????
斯くして。
父上や私が掲げた大陸統一は、和睦・共存という形で成し遂げられた。
そんな、大陸史上で前代未聞の大偉業を果たした異母弟。
誇りに思わない理由など、何一つ無かった。
帝国内では、母上だけが最期まで彼を認めず、怖れ続けていたけれど。二人が和解出来なかったのは、ちょっと寂しいな。
そして、異母弟は。
38歳の誕生日を迎えた其の日 に、皇帝を退位する旨を宣言。
帝政は共和政に移行し、正真正銘"一人ひとりが自分の力で生きられ、互いに助け合う世界"が誕生したのだった。
退位した異母弟は、騎士だった親友の勧めで、彼の実家 へ招かれていった――親友の妻子と共に。
あの家なら、余生も安心して過ごせるだろう。
宰相は、異母弟を傀儡として野心と名誉欲を満たし、いずれ
異母弟は誰よりも其れを的確に察して理解し、納得した上で、そんな宰相に協力を願っていたという。
異母弟は、父上や私とは違う考え方で、我等の悲願を受け継ごうと懸命だった。
先ずは、傾きかけた国内情勢の安定を第一優先とし。
一方で、私が死んだ事で離れた一部兵力の補完も兼ねて、帝国内北部を本拠地とする修練集団に交渉・当時発生していた問題を解決。
更に異母弟自らが短期集中型の弟子入りをして、其の成果は
異母弟は、其れからも平和的な手段で隣国や他国と向き合い、互いに納得が出来る形に成るまで話し合い、助け合っていった。
相手の国が苦手とする分野が有れば、帝国に出来る範囲で助力し。
逆に帝国が苦手とする分野については、相手にとって無理にならない範囲で援助を願う。
此れまで、大陸の各国が睨み合い小競り合っていた、其々の原因と向き合い、其の解決の為に、一緒に考え、打開していく。
武力に依る制圧では無く、互いの信頼を築き、其の実績を積み上げ、共に笑い合える世界を、目指していた。
帝国内では、異母弟は飲食を兵達と共に分かち合うようにしていた。
そうして兵達とも交流を持ち、上流階級以外の考え方をより理解し、寄り添おうとしたのだろう。
其れは結果的に、食事への服毒に依る皇帝暗殺という手段を防いでいたが――きっと異母弟は知る由も無い。
私の母上や、其の御実家にも色々と考慮をしてくれていて、皇居近くに国営庭園の建設を考案し、其の計画実行を母上に一任したりしていた。
何れ実行したいと考えていた教育改革も、元から在る大学を貴族以外でも通える学舎への改装を発端に、隅々まで為してくれた。
勿論、全てが順風満帆に行えていたわけでは無かった。
けれど、其れでも異母弟は諦める事無く、尽くを成し遂げていった。
例え相手が異民族であろうと、亜人種であろうと。
言葉が通じて、語り合える相手ならば――余程の事態にならない限り、平和的に国交を繋げ、絆を紡いでいった。
いつしか、そんな彼を民達はこう呼んでいた――"和睦の賢帝"と。
彼の傍には、いつだって
彼の背後では、あの宰相が嫌味ったらしくも助言や考察をしてくれて、私や父上の時と同じ位、いや其れ以上に頼もしかった。
あぁ、そういえば
双方合意なら良いか……でも肝心の異母弟に確り説明してないのは、ちょっとどうかと思うんだが。良いのか????
斯くして。
父上や私が掲げた大陸統一は、和睦・共存という形で成し遂げられた。
そんな、大陸史上で前代未聞の大偉業を果たした異母弟。
誇りに思わない理由など、何一つ無かった。
帝国内では、母上だけが最期まで彼を認めず、怖れ続けていたけれど。二人が和解出来なかったのは、ちょっと寂しいな。
そして、異母弟は。
38歳の誕生日を迎えた
帝政は共和政に移行し、正真正銘"一人ひとりが自分の力で生きられ、互いに助け合う世界"が誕生したのだった。
退位した異母弟は、騎士だった親友の勧めで、
あの家なら、余生も安心して過ごせるだろう。
全てを見届けて
「…………」
魂の底から、安堵した
「……良かった」
異母弟は、私よりも、ずっと優秀だった。
私と似た様な
本当に。
心から、良かった、と、思ったんだ――
余談。
私の婚約者について、だが。
彼女、私が気付かない内に婚前交渉 を何度か仕掛けていたらしく。
私が死んで間も無く実家に戻った後、其れが実を結んでいた事が発覚したらしい。
時期的に、遠征前夜かな……いや本当、正式な婚姻はまだだったから、私も自重してたのに……女性って、思ってる以上に強か()だな……
因みに産まれたのは、何方かというと彼女似の女児だった。眼の色は私に似てたかもしれない。
此れで男児だったら、色々な意味で危なかったな……当時の母上に知られたら、どうなっていたか……
まぁ最終的に母上には勘付かれなかったし、民の視線も異母弟の活躍の方に逸らされたみたいだし、平和に産まれ年頃まで育ったようで、心底安心した。
最期まで心身健やかであれ、我が娘よ。
私が死んで間も無く実家に戻った後、其れが実を結んでいた事が発覚したらしい。
時期的に、遠征前夜かな……いや本当、正式な婚姻はまだだったから、私も自重してたのに……女性って、思ってる以上に強か()だな……
因みに産まれたのは、何方かというと彼女似の女児だった。眼の色は私に似てたかもしれない。
此れで男児だったら、色々な意味で危なかったな……当時の母上に知られたら、どうなっていたか……
まぁ最終的に母上には勘付かれなかったし、民の視線も異母弟の活躍の方に逸らされたみたいだし、平和に産まれ年頃まで育ったようで、心底安心した。
最期まで心身健やかであれ、我が娘よ。