之布岐の末路
カサドール
「・・・まさか自ら地獄に志願するとは思わなんだ」
独りごちる白銀蒼白眼の者
シブキ
「地獄に逝くつってんだろ、逝かせろや」
その者の視線の先には地獄にて門番達から突き返されそうになっている薬師の姿があった
どうやら薬師の生前の功罪にて功ばかりだったので
地獄に堕とすには…と扱いに困っていたらしかった
カサドール
「自死の罪分は入れてやれば良いだろうに此処の地獄は些か基準が甘いらしい」
やれやれ…と此には偶さか支配域である世界のある地獄に監査しにやってきた終末の存在も呆れていた
監査しにきた地獄では功罪の差、要はプラマイで決まる様だったので
とはいえ其処に居座られても正直言って邪魔だ
故に
カサドール
「…其処まで地獄に逝きたいならば連れて行ってやっても構わない」
薬師にそう告げた
門番達は困惑していたが『上にちゃんと通しておいてやる』とも言っておけばそれ以上の追求はされなかった
シブキ
「誰だお前…
否、この際は誰だって構わねェ
本当に連れて行ってくれるンだろうな?」
否、この際は誰だって構わねェ
本当に連れて行ってくれるンだろうな?」
カサドール
「ああ、二言はない
お前にとっての地獄が有るからな」
お前にとっての地獄が有るからな」
ついてこいとそうして薬師を連れていく事となり
数刻ほど経った頃か
そうして連れ出した先は地獄と言うほど凄惨で苛烈な場所ではないけれど
天国と呼べるほど幸せや安寧に満ち溢れた場所でもない
何もない場所というのが近いか
只、そんな何もない場所の先に何人かの姿が在った
薬師はその者達の姿を見て驚いた様子で終末の存在に視線を向けた
此はどういう事かと言うように
カサドール
「……お前の罪は"妹君を救えなかった事に非ず"
アレは医師の言う通りどうにもならなかった、どれだけ急ごうが終わりは決まっていた
お前の罪はありもしない罪を勝手に背負いそれを知る者達の気持ちを自ら幕を下ろしたその時まで蔑ろにした事だ
その心情自体の理解は、出来なくはないがね」
アレは医師の言う通りどうにもならなかった、どれだけ急ごうが終わりは決まっていた
お前の罪はありもしない罪を勝手に背負いそれを知る者達の気持ちを自ら幕を下ろしたその時まで蔑ろにした事だ
その心情自体の理解は、出来なくはないがね」
であれば、その罪を償う方法は―――もう分かるな?と
それが薬師に与えた罰であると暗に告げてから「行ってこい」と背中を押した
後はお前次第なのだと
シブキ
「ハハ―――最期の最期でそう言われるたァな」
医師から言われた"運が悪かった"なんて言葉では納得出来ず
"自分がもっと早く薬草を見つけて帰っていれば"と
自責の中で自ら人生の幕を下ろした薬師は己の罪、その罰を漸く理解した様で
シブキ
「嗚呼…行ってくる」
そう告げて妹、否、家族の元へ駆けていったのだった
妹を初めとした家族に大層叱られながらも漸く再会を果たしたのを見届けた後
カサドール
「・・・まあ、時間など腐る程ある」
後は家族の問題だろう、と踵を返し
終末の存在は姿を消した
此にてとある薬師のお話は確かな終わりを迎えた
自分の本来の罪を自覚しその罰を理解し贖い続ける
そんな結末だった
〆