1:めでたしめでたし
……うーん
起きて、声をかけられたその後。まだどこに行くでもなく、勇者は考え事をしていた。
エルディス
死んじゃったのか、僕
エルディス
……そっかぁ
押し寄せる軍団を仲間に託し、親友と共に魔王城の魔王を倒して。
そして、待たせてると仲間たちのもとに二人で戻ろうとした。
ただここまで走り抜けた大団円に向かって、踏み出した。
そうしたらどうだったか。
痛みが走り、光の矢に貫かれた。高濃度の瘴気に動けなくて、それでもゆすり続けてくれた親友の声は聞こえていた。
治療しようと駆け寄ってくる聖女も見えていた。
だけど、二人を狙ってまた弓が引き絞られる音が、風に乗って聞こえていた。
だから、最後の力を振り絞って突き飛ばした。そうすれば自分は助からないのだと分かっていて。
エルディス
皆、元気に生きてるかな
勇者は仲間に、親友に、皆に生きていてほしかった。
自分が死ぬことは、確かに怖かった。けれどもそれよりも、平和になった世界で皆幸せに生きていてほしかった。
だから、自分が死んだことよりも。
エルディス
みんな、元気かな
それが心配だった。
その仲間たちは呪われ、親友は「勇者」を演じ続けているなんて、知る由はなかった。