雷鳴、轟音。じきに静寂。

ENo.101.柳 啓佑 / 作成:2026/08/26 00:00 / 更新:2026/08/26 00:00
ぬかるんだ地面に足を取られながら山中を進む。
いくら進んでも、いつも餌をねだる人懐こい猫も、それを追っていった筈の少女の影すら見付からない。
ひどい大雨で、声なんか聞き分けられなかった。
見付けさせまいというかのように、遠くで雷がけたたましい音を鳴らしながら落ちている。

全身にまとわりつく水分が鬱陶しい。
土砂降りの雨に遮られて、手の中の光源は数歩先までしか照らさない。
それでもきっと無いよりはマシな筈だった。
気は急くばかりで、足元なんかろくに見ていなかったけれど。

進行方向から少しずれた場所の茂みが音を立てた気がして。
慌てて振り返ったら、雨で緩んだ地面が崩れていった。
そのまましばらく滑っていって。
滑った先には崖があって。

その下で指一本動かせないまま、ただ雨が叩きつけられる地面を眺めて、考えて。
呼吸がしづらい。全身が痛い。視界はどんどん霞んでいく。
でもそんなことより、あの子は、ちぃちゃんはきっとおれが死んだことを悲しんでくれちゃうんだろうなと思ったら。
それが何より悲しくて。痛い。

おれの大事で大好きな友達。
あの子にはもう悲しい思いをしてほしくなんかなかったのに。
ただ毎日楽しく過ごして笑っていてほしかったのに。


ごめんね、ちぃちゃん