くみどにおこしてうめるこは

ENo.59.葦舟積羽 / 作成:2026/08/22 20:38 / 更新:2026/08/22 22:42
えーっと。

俺は関西にある港町で生まれ育っちゃあとったんです。

京都の舞鶴とか神戸とか、そんな栄えとるところやのうて、バリバリの太平洋側。ははは、言うてまえば辺境も辺境なんですわ。マァ、歴史あるお寺さんとかもありましたし、ええ景色も見れましたんで、全く人が来ん言うことはあらんかったと思います。地元の人らも観光に力入れとりましたわ。

ほんでも。ヨソから来た観光客さんから見りゃあ物珍しいもんばっかやして、飽きもせんし楽しめる思うんですが、俺は地元もんでしたから。船も海もお寺さんも、チビの頃から見とるもんやし、あんま珍しい思えんようになるしで、飽きてまうんですわ。そういう意味では、暇な所でしたわ。

そいではじめたんがカメラだったんです。高校入学の祝いでオトンが買うてくれましてん。ごっつええ、までは行きゃあせんが、それなりお高いカメラでして。見慣れてもうた景色でも、レンズ越しに見て切り取ったら、まったく別のモンに見えて。俺はもうこれの虜になってもうたんですわ。もっと色んなもん撮りたい、もっと珍しいもん撮りたい、て。そのために電車とバス乗り継いで大阪まで行ったこともあったっけ。ありゃあちょっとした冒険でしたわ。はは。

ほんであの日の夜もそうやった。夜の海ってなんかええな思いまへん?俺は思うんですわ。普通皆さんが海の写真言うて思い浮かべるんは昼の海でっしゃろ、ほな夜のんはどないなるんやろか、て。そんで撮りたなったんです。

うちのオトンやら、町のジィさまバァさまは、夜にガキが外出るんにええ顔をしません。せやから、黙って夜に家出て、海に行きました。家から海までは目と鼻の先ですさかい、バレん思うたし、なんかあっても直ぐに帰れるて、タカを括っとったんですわ。

そんで。

……。

はは。

やっぱ、あかん言われてることには、あかんて言われるなりの理由があるもんなんやなぁ。