アウトフォーカス:5
人から見れば鼻つまみ者。
しかし、自分の目には紛れもない“美しいもの”たち。
一般的視線から見た時の酷さと。
自分の目から見た時のうっとりとした淡い酔いと。
その狭間で揺れている心があり。
現像する間は何しろ光を通してはならないから。
具合が悪いことこの上なかった。
これが思春期特有の“イキり”ならよかった。
そうではないのだから苦しかった。
束となった写真たちをずっと引き出しの中に隠していた。
項垂れている。そのまま。机に。
…
これを欲しがるうえのひと達もいるのだとは思う。
これをテーマにしたところで商売が成り立つかと言われれば、正直ありだとは思った。
そういった写真を、隠さず堂々と展示している人も、片手で数える程度には街中にいた。
大抵老齢にさしかかったもので、若者ではなかったのだが。
ただ、そういった写真を眺めた時の。
兄の苦笑いを覚えていた。
兄はそういう人だった。真っ当であるから、真っ当ではないものに眉を寄せる。
大半の人がそうであるように、兄もまたそうであった。
否定はしなかった。そういう人だった。
兄のようになりたかった。
兄のようになれなかった。
どうしてだ。兄弟で血が繋がっているのに。
どうしてこうも違うというのだろうか。
人間として出来がいいのは自分なのかもしれなかった。
賢さも、立ち回りも。
どうだろう。その分、対人コミュニケーションは兄の方が得意なのが事実だ。
先に外回って写真を撮り、依頼を受け駆け回るから視野が広いとでもいうのか。
自分の好みではなかった。それでも兄の写真は好ましかった。
人への好意が感じられた。
兄によって真っ当に愛されて育った。その感性が熱を帯びていた。
自分よりも、うんと遥か天上の方にいて遠く遠くにあるように感じられた。
あの人がお日様なんだとしたら自分はそれに照らされて入った影帽子だった。
地面に焼きついて張り付いて、残るばっかりの。
太陽が仕方ないと言いながらついてくるのを許すばっかりの。
目の上のたんこぶ。
「……………」
なんだか考えれば考えるほど煮詰まってきて。
変な涙が出てきた。情けなくて膿んでいる。
ただ頭の中でリフレインするのは、兄のようになりたかったという気持ちだけだった。
ずっとそれだけで、きっとそのようになるのだと思っていた幻想が砕かれた。
なれないのだと割り切ったのに未練がましかった。
アングラ。自分の感性はそっちに傾いていた。
ちょっと薄暗い、儚いのが、美しかった。
生きているよりも。
死んだものが好ましい。
露悪的な趣味で反吐が出る。
褐色失われた肌の色の一瞬が好ましい。
…
だから家を出て、とっとと自立するまでが早かった。
一緒にやればいいだろという言葉を振り切った。
見送られた目線が優しかった。
別に今生の別にしなくてもよかったのに。
そうしたのは自分だった。
──手紙を寄越されたからちゃんと読んでいたのに、結局自分から返すことはなかった。
不義理だった。どちらにせよ、自分はずっと外に出ていた。
死んだものって星の中じゃ少なかった。
綺麗な観光の星は、綺麗であるよう上が形作っていたのだろう。
だからと言って反抗もしなかった。
した場合のことは、過去の歴史が物語っていた。
そうでなくても、星の住民はみんなそんなこと考えるものはもう殆どいないことだろう。
安定した暮らし。
そういうのを好ましく感じるのが人々だった。
……
内容が内容だったから秘密裏に写真を出回らせていたのにもかかわらず。
やっぱり、見立て通り好む上の人はいるものだった。
裕福ではないが、暮らせる程度にはポイントを得ながら。
数年。
──兄が死んだ。嫁も死んでいる。
子供を1人引き継げ、と。
上からお達しがあった。
しかし、自分の目には紛れもない“美しいもの”たち。
一般的視線から見た時の酷さと。
自分の目から見た時のうっとりとした淡い酔いと。
その狭間で揺れている心があり。
現像する間は何しろ光を通してはならないから。
具合が悪いことこの上なかった。
これが思春期特有の“イキり”ならよかった。
そうではないのだから苦しかった。
束となった写真たちをずっと引き出しの中に隠していた。
項垂れている。そのまま。机に。
…
これを欲しがるうえのひと達もいるのだとは思う。
これをテーマにしたところで商売が成り立つかと言われれば、正直ありだとは思った。
そういった写真を、隠さず堂々と展示している人も、片手で数える程度には街中にいた。
大抵老齢にさしかかったもので、若者ではなかったのだが。
ただ、そういった写真を眺めた時の。
兄の苦笑いを覚えていた。
兄はそういう人だった。真っ当であるから、真っ当ではないものに眉を寄せる。
大半の人がそうであるように、兄もまたそうであった。
否定はしなかった。そういう人だった。
兄のようになりたかった。
兄のようになれなかった。
どうしてだ。兄弟で血が繋がっているのに。
どうしてこうも違うというのだろうか。
人間として出来がいいのは自分なのかもしれなかった。
賢さも、立ち回りも。
どうだろう。その分、対人コミュニケーションは兄の方が得意なのが事実だ。
先に外回って写真を撮り、依頼を受け駆け回るから視野が広いとでもいうのか。
自分の好みではなかった。それでも兄の写真は好ましかった。
人への好意が感じられた。
兄によって真っ当に愛されて育った。その感性が熱を帯びていた。
自分よりも、うんと遥か天上の方にいて遠く遠くにあるように感じられた。
あの人がお日様なんだとしたら自分はそれに照らされて入った影帽子だった。
地面に焼きついて張り付いて、残るばっかりの。
太陽が仕方ないと言いながらついてくるのを許すばっかりの。
目の上のたんこぶ。
「……………」
なんだか考えれば考えるほど煮詰まってきて。
変な涙が出てきた。情けなくて膿んでいる。
ただ頭の中でリフレインするのは、兄のようになりたかったという気持ちだけだった。
ずっとそれだけで、きっとそのようになるのだと思っていた幻想が砕かれた。
なれないのだと割り切ったのに未練がましかった。
アングラ。自分の感性はそっちに傾いていた。
ちょっと薄暗い、儚いのが、美しかった。
生きているよりも。
死んだものが好ましい。
露悪的な趣味で反吐が出る。
褐色失われた肌の色の一瞬が好ましい。
…
だから家を出て、とっとと自立するまでが早かった。
一緒にやればいいだろという言葉を振り切った。
見送られた目線が優しかった。
別に今生の別にしなくてもよかったのに。
そうしたのは自分だった。
──手紙を寄越されたからちゃんと読んでいたのに、結局自分から返すことはなかった。
不義理だった。どちらにせよ、自分はずっと外に出ていた。
死んだものって星の中じゃ少なかった。
綺麗な観光の星は、綺麗であるよう上が形作っていたのだろう。
だからと言って反抗もしなかった。
した場合のことは、過去の歴史が物語っていた。
そうでなくても、星の住民はみんなそんなこと考えるものはもう殆どいないことだろう。
安定した暮らし。
そういうのを好ましく感じるのが人々だった。
……
内容が内容だったから秘密裏に写真を出回らせていたのにもかかわらず。
やっぱり、見立て通り好む上の人はいるものだった。
裕福ではないが、暮らせる程度にはポイントを得ながら。
数年。
──兄が死んだ。嫁も死んでいる。
子供を1人引き継げ、と。
上からお達しがあった。