【置き去りの記憶】
──遠い、遠い記憶がある。
子供は、銀の髪の影に縋っていた。
銀の髪の影も大人とは言えない見た目だったが、
目の前の金髪の少年よりも歳上らしかった。
銀の髪の影が、否定する。
銀の髪の影が、遠くを見るような目をした。
幼きフィレンツォは、
必死の顔で兄を見上げていた。
ねぇフィレンツォ、と。
その兄の青い瞳が真っ直ぐに見つめた。
言って。
止める暇もなく、兄⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎が窓から外へ飛び降りた。
ふわり、冷気が巻き起こる。
次の瞬間には、もうその影は消えていた。
置き去りにされた幼子が、
たったひとり、残される。
その日、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎は王族位を剥奪され
存在しない第零王子とされ、
フィレンツォが第一王子の位置となった。
そしてまだ幼いその双肩に、
大量の重荷が負わされることになる────。
星空見上げて思い出したのは、
自分を置き去りにした第零王子。
あの日も星が綺麗だった。
胸の内には、深い憎悪。
僕はアイツを、許さない。
彼は見ている。
第零王子だったはずのその人が、
他国の魔法サーカス団で楽しそうにしていたのを。
違う名を名乗って、王族という重荷もなくて。
仲間たちと共に、笑っていたのを!
ぽつり呟いて首を振る。
それでも、投げ捨てる訳にはいかないんだ。
彼には、決めていることがある。

帝政アルドフェック第一王子。
みんなの“兄上”。それが今の座。
か弱く臆病な“弟”なんて、もういない。
使命と責任を、全うするだけだ。
「…………僕を、おいていくの?」
子供は、銀の髪の影に縋っていた。
銀の髪の影も大人とは言えない見た目だったが、
目の前の金髪の少年よりも歳上らしかった。
「…………僕がダメな子だから、
兄上は嫌になっちゃったの?」
兄上は嫌になっちゃったの?」
「…………それは違うよ、フィレンツォ」
銀の髪の影が、否定する。
「私が嫌になったのはお前じゃないよ。
私は……私は…………」
私は……私は…………」
「この国が、嫌いなんだ」
銀の髪の影が、遠くを見るような目をした。
「私はこんな国なんか出て、
自由が欲しいのさ」
自由が欲しいのさ」
「この国の王子なんてまっぴらだ!
だから、出て行くことにした」
だから、出て行くことにした」
「………………」
幼きフィレンツォは、
必死の顔で兄を見上げていた。
「僕は……僕は置いてかれちゃうの。
兄上は僕のこと、置いていくの」
兄上は僕のこと、置いていくの」
「…………そういうことになるね」
ねぇフィレンツォ、と。
その兄の青い瞳が真っ直ぐに見つめた。
「…………私のことを恨むがいい、憎むがいい。
私は最悪の兄さんさ?
弟に全て押し付けて、何もかも捨てて国を出るんだから」
私は最悪の兄さんさ?
弟に全て押し付けて、何もかも捨てて国を出るんだから」
「…………ごめんよ」
言って。
止める暇もなく、兄⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎が窓から外へ飛び降りた。
ふわり、冷気が巻き起こる。
次の瞬間には、もうその影は消えていた。
「…………………………」
置き去りにされた幼子が、
たったひとり、残される。
その日、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎は王族位を剥奪され
存在しない第零王子とされ、
フィレンツォが第一王子の位置となった。
そしてまだ幼いその双肩に、
大量の重荷が負わされることになる────。
「…………大っ嫌いだ」
星空見上げて思い出したのは、
自分を置き去りにした第零王子。
あの日も星が綺麗だった。
「あの裏切り者め……卑怯者めが。
お前のその身勝手のせいで、
僕はどれだけ大変な道を歩むことになった」
お前のその身勝手のせいで、
僕はどれだけ大変な道を歩むことになった」
胸の内には、深い憎悪。
僕はアイツを、許さない。
彼は見ている。
第零王子だったはずのその人が、
他国の魔法サーカス団で楽しそうにしていたのを。
違う名を名乗って、王族という重荷もなくて。
仲間たちと共に、笑っていたのを!
「ずるいよ…………」
ぽつり呟いて首を振る。
それでも、投げ捨てる訳にはいかないんだ。
彼には、決めていることがある。
「…………私は、あの裏切り者のようにはならぬ」
「“覇王”の道具? 何だって良いさ。
私は最後まで帝国に忠実であろう。
逃げはしない、投げ出しはしない」
私は最後まで帝国に忠実であろう。
逃げはしない、投げ出しはしない」
帝政アルドフェック第一王子。
みんなの“兄上”。それが今の座。
か弱く臆病な“弟”なんて、もういない。
「誰も置き去りには、しないから──」
使命と責任を、全うするだけだ。