【追憶:アルドヴェイン】

ENo.43.フィレンツォ・アルドフェック / 作成:2026/08/25 17:43 / 更新:2026/08/25 18:37
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【アルドヴェイン・ハインツ】

 フィレンツォの従者にして幼馴染。乳兄弟。
 気さくな性格の青年で、
 優れた剣の腕を持つ。

 帝国や“覇王”のことよりも、
 フィレンツォの方がずっと大事。
 フィレンツォとは互いに信頼し合っており、
 ふたりきりの時は特別な呼び名を使う。

 フィレンツォが唯一、
 腹を割って本心で話せる相手だったが、
 大戦の際に主人を庇って戦死した。





 それは、ある日のささやかな思い出だった。

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「生まれ変わったらさ、俺、
 フィールのお兄ちゃんになるよ」

 ふたりきりの昼下がり。
 不意にアルドヴェインが言ったのだ。

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「………………。
 …………僕の方が誕生日は早いが?」
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「知ってるよ、知ってる!
 でも俺、お兄ちゃんになって、
 頑張り屋のフィールのこと助けてやりてーの」
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「…………ルド。
 君には既に、さんざん助けられているが」

 いまいち意図を掴みかねるフィレンツォに、
 アルドヴェインが拗ねた顔。

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「そういうことじゃねー!」
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「ならどういうことなんだ。
 分かりやすく説明してくれよ」
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「………………」
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「俺がお兄ちゃんになって、
 フィールが何も背負わなくて良いようにする!
 だってフィールは真面目過ぎるから、
 ひとりで何もかも背負おうとするじゃんね?」
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そんなこと、もう俺がさせないよ、って!」
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「………………」

 まさかそんなこと言われるなんて、
 まるで予想がつかなくて。
 フィレンツォは、呆気に取られた顔をした。

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「…………僕のことを、
 心配してくれるのか」
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「当たり前じゃん!
 俺はフィールの従者だけど……
 フィールの幼馴染で、兄弟みたいな間柄で!」
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「……心配なんだよ、
 いつかお前が潰れてしまわないかって」
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「……俺はフィールの為なら、
 ふたりで城を出る覚悟だよ。
 こんな厄介な場所なんか出て、
 ふたりで生きても良いなって! 」
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「……ちょっと本気だかんな?
 馬鹿にすんなよ」

 誰もがフィレンツォに責任を負わせる中で。
 アルドヴェインだけが、
 そんなことを言ってくれた。

 アルドヴェインは、
 “ただのフィレンツォ”を見てくれたんだ。

 嬉しかった。でも、それでも。
 その責任感は、やっぱりどうしても。

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「…………だけど僕は此処を出ない、出られない。
 第零王子のように愚かな真似は、しない」
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「………………」
「そーいうとこがフィールの良いとこであり、
 面倒なとこだよなー」
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「…………好きに言うが良いさ、ルド」
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「ま、でもその回答は分かってた。
 分かってたから俺は──
 従者として、共にいるだけだから!」

 アルドヴェインが、にっと笑った。

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「──最期までお供しますよ、
 フィレンツォ殿下?」





 ずっと一緒に居られると思っていた。
 歩んでいる道は大変でも、
 アルドヴェインとなら何処までも、と。

 それなのに。
 アルドヴェインは、
 フィレンツォを庇って命を落とした。

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「最期までお供すると言ったじゃないか…………。
 ルドの愚か者が…………ッ!」

 そんな君は、もういない。

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「君の提案に夢を見たんだ。
 君の存在に……僕は救われていたのにッ!」

 あまりにも当たり前に隣にいる存在だから、
 ありがとうを、言えなかった。

 胸に積もるは悲しみと、後悔ばかり。