日々は連ねられり重ねられり、憶が故

ENo.83.シュガー・シュトーレン / 作成:2026/08/26 13:22 / 更新:2026/08/26 13:22
──彼は、時折遊びに来たわ。
私は何度も「帰りなさい」って言ったのに

どうにも頑固で、根負けしちゃったの。


彼の名前は"シュガー・███"

元々は良い生まれだったらしいけれど、貴族同士のいざこざに巻き込まれたり、そういうのが嫌でこの村へ越してきたらしいわ。

その村の言い伝えでは
『あの森には立ち寄らぬ事。赤い灯火は片道』
………なんて、言われてるのだとか


だから、親は子供によく言い聞かせるんですって

つまり彼は言い伝えの守らない悪い子。
「あなたが悪い魔女なら、俺は悪い子ですよ」って、お揃いだね…って、笑いかけてきたもの

ほんと、気の座ってる人



どうせすぐに飽きるでしょ、なんて思ってたら

とある日──



「シュトーレンさんはこの森に住み始めて………
どれくらい経つんですか?」

『この森に?』
『そうねぇ……正確に言うと、ずっと住み続けてる訳じゃないの』

『私たちみたいな生まれながらの"魔女"や"魔法使い"は
その身に魔力を宿しすぎている。だから、人の身体だと50年ほどしか体を保てないのよ』

「…………」

『ああ、心配しないで。
その代わり、私たちは"輪廻転生リィンカーネーション"をするのよ』

『…簡単に言えば、"生まれ変わり"ね』

『生まれ変わるときに、一つだけ
次の命に持って行けるの』

『例えば、"記憶"』

『私たちはその生まれ変わりに、"魔法"を持って行って
また次の命で、その魔法を修練して』


『そうやって、紡いで行くのよ』


「…つまり、シュトーレンさんは………
何度も、この森で"魔女"として、人のことを守っているんですか?」
「何年も、何年も………」

『……察しがいいと困るわねぇ………
そうよ、ずっと前からね』

『この森は人にとって、危ないもの』

平和な村に住む人達が、傷つかないように
人間たちが余計な心配をしなくていいように、って

そして、この森に住む動物さんを守るために



「………俺もそれ、手伝っちゃダメですかね?」


『……ほぇ?』



『き、聞いてたのよね!?
その身に魔力を宿しすぎると、危ないのよ…?!』

『それも、あなたはただの"人"で………』


「ただの人だから、なんだって言うんですか。
それに、身に魔力を宿さない方法で、魔法を使える手段を探せばいい」

「俺、聞いたことありますよ。
この空気中に、この空間にも、"魔力"は漂ってるって」


『………それは、間違いじゃない…けど』
「…………」


「理論上は、ってことですよね?」



彼は、悪い人だったわ
自分勝手で、我儘で、煙草やお酒もしていて


そして、悪い魔女の事まで、誑かしてしまうのだから




その日から、私は彼の"センセイ"に
彼は、私の"弟子"に



とても短くて、とても儚くて

とても、楽しい日々が始まったの